脳動脈瘤に対するステントストラット位置の自動最適化に関する研究

摘要

血管壁が瘤状に肥大化する病気である脳動脈瘤の治療に血管内治療がある．近年ではフローダイバータステント(FD)と呼ばれる，動脈瘤内の血流を低減させ血栓化を促す医療デバイスが注目を集めている．しかしながら，現状のFD は一様に密なストラットで構成されているため，親血管が血栓で詰まる可能性が指摘されている．これに対して，著者らは血流が親血管から動脈瘤に流入する領域(Bundle of inflow, BOI)内部にストラットを留置することがステント形状設計の上で重要であると示唆してきた．さらに，ステント形状探索の手法として，近年の研究では最適化と呼ばれる手法が注目を集めており，本手法を用いることで高多孔率でありながら血流低減効果の高い，ステントの新しい設計指針を構築できると期待されている．しかしながらこれまでの最適化手法では多数の計算用モデルを用いるため，形状あるいは計算格子の作成に多大な手間と時間を要することが指摘されている．そこで著者らは2 次元理想形状動脈瘤に対し，ステント形状作成，計算格子生成，流体計算，血流低減効果の評価の一連の過程を自動化した，ステント形状最適化プログラムの開発を行い，自動化プロセスの有効性を示した．そこで本研究では，さらに3 次元動脈瘤に対しステントストラット位置の最適化プログラムの開発を行うことで，目的関数と最適ストラット位置の新たな関係性について報告する．