2 次元と3 次元環境下での細胞と細胞骨格の力学計測

摘要

細胞が出す力，細胞の変形ならびに細胞の機械的な性質は，細胞の運動や分裂，細胞の形，ひいては，細胞集団から成る生物個体の形成に大きな影響を与える．例えば，アフリカツメガエル胚の発生過程で神経管が形成される際には，細胞の表層部位が変形することで組織にくぼみが生じ，これが管形成のきっかけとなる．ここでは，アクチン繊維による収縮力が変形の原動力となっている．また，生体組織内での癌細胞は，細胞が力を出すことで細胞外基質を変形させ，加えて細胞自身も自らの形を変形させることで，移動(浸潤)を行っている．細胞が出す力や機械的な性質は，細胞骨格が根源となっている．細胞骨格には，上述のアクチン繊維，微小管，中間径フィラメントが主に存在することが知られている．これらにミオシン，キネシン，ダイニンなどの分子モータータンパク質が相互作用することで，細胞内での物質の輸送や細胞の力が発生する．それでは，細胞が変形する際や力を出して運動する際の細胞骨格の変形はどうなっているのだろうか．運動する細胞中に存在するアクチン繊維に発生した歪を評価した研究，細胞が出す力を増加させた際のアクチン繊維の変形を評価した研究，などが報告されている．このようにアクチン繊維の変形については研究されつつあるが，微小管や中間径フィラメントなどの細胞骨格の変形については，未知の部分が多い．そこで本研究では，中間径フィラメントに注目し，他の骨格繊維を崩壊させたときにおける，中間径フィラメントに発生した変形を評価した．