植物繊維強化プラスチック射出成形板の引張強度に及ぼす切欠きの影響

摘要

ガラス繊維強化プラスチック（GFRP）は、軽くて強い材料として多くの分野で使用されており、例えば輸送分野ではその使用時において、軽量、コンパクト化により燃費向上に貢献し、低炭素社会構築の一翼を担っている。しかし、廃棄の際には、強くてかさばるがゆえに多くのエネルギーを必要とし、廃棄、リサイクルしにくい材料と考えられている。植物繊維を強化材として使用すれば、安価で、製造時のエネルギーはガラスに比べ小さく、より簡単に、廃棄、リサイクル（サーマルリサイクルも含む）できるため、GFRP の代替材料として期待されている。しかし、代替材料として植物繊維強化プラスチックを使用するには、多くの基礎的データが不足していると思われる。部材として使用する際、設計上、応力集中部が生じ、破壊はこの部分を起点とする場合が多いことが知られている。このため、破壊強度に及ぼす応力集中部、例えば切欠きや穴の影響を明らかにすることは重要であると考えられる。著者らは、これまでGFRP 切欠材の破壊に対して、切欠底付近における力学的状態の厳しさに基づく破壊基準がよく適用できることを実証している。本報は、ジュート繊維で強化したポリプロピレン射出成形板（JF/PP）を用いて、切欠試験片を作成し、引張試験を行い、引張強度に及ぼす切欠きの幾何学的形状の影響について、切欠底付近における力学的状態の厳しさの観点から検討を行ったものである。