不動態化した鉄電極上にカルボン酸イオン自己組織化膜を作製するためのアノード分極によるさらなる改良

摘要

この保護皮膜を作製するためには，注意深い正確な操作と長時間の処理が必要であり，作製時間の合計∑tは192hに達した．∑tの短縮は，皮膜の工業的な作製のために大変重要な課題である．これまでに，C_(18)TESをオクチルトリエトキシシランC_8H_(17)Si（OC_2H_5）_3（C_8TES）に替えて∑tを半減させたが，皮膜が薄くなり，不動態皮膜破壊までの時間t_(bd)が大幅に短くなった．さらに，0.1M NaNO_3中で不動態皮膜を48h補修処理する過程を，1.0M NaNO_3中で4.0h処理することに変更して，∑tを57hへ短縮した．これ以上の∑t短縮方法は，前報で自己組織化膜作製過程に向けられ，HOC_(16)A~-溶液濃度を1×10~4Mから1×10~(-2)Mに高めて，処理時間を44hから6hに短縮したところ，大気開放0.1MKClO_4中で240h以上だったt_(bd)が23.6hへと大幅に短くなった．これは，HOC_(16)A~-のもつCO_2~-とOHの2つの吸着基が硬い酸であるFe~(3+)といずれも安定な結合を作る硬い塩基なので，高濃度，短時間で処理すると吸着が両者で起こり，その後の化学修飾によって皮膜が不規則な構造になるためと考えられる．本報では定電位アノード分極を行うことによって，HOC_(16)A~-の不動態皮膜表面［FeO］OHに対する(CO_2)~-での吸着を優先させ，一様な自己組織化膜の作製を試みた．