SUS304鋼のSCC対策としてのショットピーニングの効果

摘要

オーステナイトステンレス鋼の塩化物SCCを防止する最も確実で安価な方法が，応力面からの対策であることは1980年代の実験室研究や化学プラントにおける実績で明らかになっている．当時のショットピーニングには，鋳鋼ショットやガラスビーズなどが使用されたが，17年前から高密度で破壊靭性値の高い部分安定化ジルコニア（PSZ）ショット材を用いているピーニングが可能になった．このショット材を用いた仕上げ面は，金属光沢をもつ汚れのない平滑面で，塩化物SCCの防止や，発生した浅いSCCの進展阻止（抑制）に効果があることが次第に認識されるようになった．しかし他のショット材を用いるピーニング処理効果とどのような違いがあるかは必ずしも明らかになっていない．そこで，3種類のショット材（PSZ，ガラスビーズ，鋳鋼ショット）でピーニングしたSUS304鋼の塩化物SCC試験を行い，下限界ひずみを定量化した．また穿孔法を用いてピーニング処理材の深さ方向残留応力や，これにひずみを負荷した時の実応力を測定し，応力面からのSCC防止策の有効性と，ステンレス鋼にピーニング処理を用いる上での留意事項について検討した．