顧客要求の違いを考慮した環境調和型製品サービス設計手法－マネージド·ドキュメント·サービスを例として

摘要

近年の環境問題の深刻化にともない，製造業において環境調和型ビジネスへの転換が求められ，製品とサービスの組合せにより顧客が要求する機能を提供する製品サービスシステム（以下PSS: Product Service System）の概念が注目されている．PSS によれば，提供企業による製品ライフサイクル（以下LC）全体に渡る製品管理が容易になり，製品LC の環境負荷を削減する方策（以下LCOP: Life Cycle Option）が従来よりも取り入れやすくなるため，環境調和型ビジネスの実現手法として期待されている．PSS に基づく環境調和型ビジネス設計の従来研究としては，PSS の提供方法の変化による環境負荷削減効果の変化をLCOP の実行率の変化として定量的に評価し，製品ごとに最適な提供方法を選択する手法が示されている．しかし，実際のビジネスでは顧客の要求によってPSS の受容性が異なるのに対し，従来研究では顧客ごとの要求の違いが考慮されていない．本研究では，顧客ごとの要求の違いを，要求項目に対する重要度の違いとして表現し，顧客ごとに最適なサービス組合せを抽出し，さらに，環境負荷とコストに対して最も顧客価値が高くなる提供方法を決定する方法を提案する．なお，本研究では代表的なPSS ビジネスであるマネージド·ドキュメント·サービス（以下MDS）を具体例にとり検討を行う．MDS とはオフィスにおけるドキュメントに関わる業務全般を最適化するためのサービスである．