注型法による低粘度熱硬化性樹脂製マイクロニードルの作製

摘要

我々は蚊の口針を模倣した低侵襲性マイクロニードルを開発してきた．従来研究において，我々は金属，単結晶シリコン，樹脂（ポリ乳酸；PLA）を材料として，直径100μm以下のマイクロニードルを作製することに成功している-．しかし，これらの針はMEMS技術を用いて作製されたため，2.5次元の自由度しか有しておらず，蚊の口針の複雑な形状を完全に模倣するには至っていなかった．この問題を解決するため，機械切削，レーザー加工，光造形等を組み合わせて微細な3次元構造を作製する技術に注目した．これまでに切削加工とレーザー加工の組合せ，または光造形により蚊の口針を模倣したマイクロニードルを作製することに成功している．ただし，これらは加工速度が遅いという問題がある．そこで，これらの構造を母型として鋳型を作製し，さらにその鋳型を用いて樹脂製のマイクロニードルを作製することを計画している．従来研究においてマイクロニードル作製に用いられてきた樹脂であるPLAは，生体適合性材料であるという利点を有する．ただし，PLAは熱可塑性樹脂であり，加熱により軟化した状態でも粘度が高いため，アスペクト比の高い鋳型の先端まで樹脂が行き届かない可能性が高い．そこで，低粘度の熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を材料とし，作製法として注型法を採用することで，低コストかつ高アスペクト比のマイクロニードル作製方法を新たに提案する．本研究はその提案手法の検証のため，市販の中実針を母型としてシリコーン樹脂製の鋳型を作製し，この鋳型にエポキシ樹脂を注入して針形状の転写性を評価した．