サービス品質向上のためのOJT計画の立案支援手法

摘要

近年，先進諸国を中心とする社会水準の向上とモノの量的な充足に伴い，顧客のニーズが著しく多様化している．それら多様化する顧客ニーズ，あるいは深刻化を増す環境問題や少子高齢化に伴う新しい顧客要求を充足するためのアプローチとしてサービスが嘱目されている．サービスを生業とする企業が継続的に利益を計上し，存続し続けるためには，品質の高いサービスを安定的に提供することが重要である．一般にサービスは属人性が高く，提供されるサービスの品質には現場従業員の能力が大きく影響する．特にこの傾向は，診療所や介護サービスのような顧客とのやりとりが大半を構成するハイ·コンタクト·サービスにおいて顕著であり，現場従業員の能力の向上は喫緊の課題として位置付けられる．現場従業員の能力向上のための現状の施策としては，実業務を通じたOn the Job Training(OJT)や集合研修などの職場外訓練，自己啓発が主であり，能力の向上にはOJTが最も有効な手段とされている．現場従業員の能力は，知識·技能·態度に大別されるが，中でもOJTは技能の獲得に対する有効性が指摘されており，現場従業員の技能をOJTの対象として教育·訓練することが広く行われている（例えば）．しかしながら，個々の技能の間には複雑な関係が存在していることからOJTを計画することは容易でなく，効果的なOJTの実施を阻害する一因となっている．そこで本研究では，現場従業員の技能に着目し，OJT計画の立案を支援することで効果的なOJTの実施を目指す．具体的には，サービス技能習得の依存関係を階層的有向グラフによって表現し，OJT計画書の作成を支援する手法を提案する．