超音波アシスト水熱合成法を用いたニオブ酸カリウム厚膜に関する研究

摘要

近年、環境や人体に有害であるという観点から世界中で鉛製品の販売規制や廃棄規制が行われている。しかし、圧電材料に限っては現在主流で用いられているPb(Zr, Ti)O3 (以下PZT)に代わる非鉛圧電材料の開発が遅れているために例外的に鉛製品の販売が認められているという現状であり、世界的に新規非鉛圧電材料の開発が急務となっている。そこで、本研究では新規非鉛圧電材料としてニオブ酸カリウムに着目した。ニオブ酸カリウムは非鉛圧電体の中では比較的高い圧電特性を持ち、さらに単結晶の状態では高い電気機械結合係数を有する材料である。ニオブ酸カリウムを厚膜化することができればアクチュエータ、センサ、医療用超音波振動子などに応用が可能になる。厚膜を合成する手法のひとつに水熱合成法がある。水熱合成法は高温高圧条件における水溶液中での化学反応を利用した結晶粉末および薄膜の合成方法である。水熱合成法は手順がシンプルであり、密閉容器内で反応させるため他の方法に比べ低温で、高純度·高品質の材料合成が可能である。我々のグループでは、化学反応を促進させるソノケミカル反応を用いることを考案し、水熱合成中に強力超音波を反応溶液中に照射する、超音波アシスト水熱合成法を開発した。超音波アシストを行うことで従来よりも緻密で厚いPZT 膜が得られることを確認している。そこでこれを非鉛化させ、医療用超音波プローブ等に代表される医療用圧電素子への応用を目指し、100 μm 以上のニオブ酸カリウム厚膜の超音波アシスト水熱合成法による成膜を研究目的とした。また、現在までに報告されている水熱合成法を用いたニオブ酸カリウム膜の膜厚は厚くて16 μmである。