突き加工を積極的に利用する薄肉立壁の高能率切削法の提案

摘要

近年，航空機産業の成長により航空機部品の金属加工の需要が高まっていて，精度／能率の高さから切削加工が広く用いられている．一方で，軽量で比強度の高い材料の採用やウィングリブなどのリブ部に代表される薄肉立壁構造の切削など，多くの課題を抱えている．例えば，立壁構造は動附性が低いためエンドミルを用いた切削加工中に静たわみや振動が発生しやすい．特に，びびり振動と呼ばれる振動は大きな振幅まで成長するため，高精度加工の妨げとなる．このびびり振動は仕上げ面性状を悪化させるだけでなく，場合によっては過大な切削力により工具の損耗を引き起こす．一般的には，びびり振動の発生を避けるためにはミリング時の切込みを小さく設定する必要があり，低能率な加工が強いられる．したがって，加工能率向上のためにはびびり振動の抑制が必要不可欠となる．本研究では，薄肉立壁のミリングにおいて，動的切削力の向きと振動方向の関係性および再生幅（振動が再生する幅）に着目し，工具を立壁の高さ方向に送る突き加工を積極的に利用した切削法を提案する．本稿では，提案手法の詳細や利点を説明し，その方法で切削を行い，びびり振動の抑制と加工能率の観点から提案手法の有効性を検証する．