タイムアクシスデザインの概念整理のための事例分析

摘要

かつて人々は，資源を必要な分だけ使用し，ものを作り，自分で作ったものは少々壊れても，修理しながら大切に使っていた．産業革命以降は，生産技術が大きく進歩し，ものが大量に生産されるようになったことで人々は少しずつ豊かになり，大量生産，大量消費，大量廃棄型社会へと移行した．現代は，物質的には豊かな生活を送ることができる時代となった一方で，人々のニーズは多様化し，製品に求められるのは性能の良さだけでなくなっている．見た目のかっこよさや，自分好みにカスタマイズできるといった要素が製品を選択する上で重要となってきている．さらには製品をより長く高品質で使用できるように，購入後のメンテナンス等のサービスも重要である．このように，時代の変化に伴って，人々の生活や価値観は大きく変化している．しかし，従来の設計論は，この時代の変化に伴う価値観の変化や，製品を取り巻く環境の変化を十分に考慮しているとは言えない．この問題に対する1つの解決策として，設計対象の時間変化を扱うことが重要であると考えた．そこで着目したのが松岡らにより提唱されたタイムアクシスデザインである．しかし，タイムアクシスデザインの概念が提唱されたのは，最近のことであり，その概念や方法論が十分整理されているとは言えない．本研究では，タイムアクシスデザインの概念を整理するために，タイムアクシスデザインに関連する事例を収集し，それらを分析することで，タイムアクシスデザインの典型的な時間変化のパターンを洗い出すことを目的とする．