極小径エンドミル加工における切削現象について－ミスト潤滑による底刃損傷の抑制効果

摘要

近年，医療分野や電子デバイス分野において，部材の集積化や微細化の進展が目覚ましく，微細金型の複雑形状化や高精度化，低コスト化などの要望もあり，微細金型の高度な切削加工技術が求められている．しかし，極小径エンドミル加工は，工具たわみや工作物の弾性変形などの影響を受けるため，加工メカニズムが複雑で，未だに不明な点も多いとされている．そこで著者らは，金型焼入れ鋼の極小径エンドミル加工における切削現象について基礎的研究を進めてきた．これまでの研究で，外周刃のみ切削に関与する側面切削モデルにおいて，切削速度の高速化とアップカット加工の採用により，工具寿命が長くなることや仕上げ面品質が向上することを示した．また，より実践的な切削手法として，外周刃と底刃の両方が切削に関与する段切削（肩切削とも称す）について検討した結果，底刃先端の刃先強度が低いため，コーナエッジ部が早期に損傷し，加工面品質が悪化することが明らかとなった．そこで，本報では，極少量のミスト油を加工中に噴霧し（以下，MQL 加工），工具と工作物間の潤滑性を高めることで底刃損傷を抑制可能かどうかについて検討を行う．