看護支援のための体動検知による臥床状態把握システムの開発

摘要

医療·介護施設において，看護師は重要な役割を担っている．看護師の仕事の一つに，夜間の見守り業務がある．見守りとは，睡眠中の看護対象者の様子を確認する作業である．特に高齢の看護対象者がベッドから出ようとした際のベッドからの転落や，歩き始めた際の転倒による事故を防止する役割がある．看護対象者はいつ覚醒するか分からないため，看護師は夜間，頻繁に見守りを行わなければならず，負担が大きい．この負担を軽減するために，ベッド上の看護対象者の姿勢をモニタリングし，看護対象者が離床する前に看護師に通知することが求められている．また，看護師が余裕をもって対応するためには，看護対象者の起床を予測し，早い段階で通知を行うことが必要となる．睡眠中の状態をモニタリングする既存の方法としてマットセンサやセンサ内蔵式離床検知ベッドを用いたモニタリング手法が挙げられる．マットセンサはシート状のセンサをベッドの足元に敷くことで，看護対象者の離床を検知することができる．安価であるため施設への導入が容易であり，操作も容易である．しかし，センサが離床を検知した時には看護対象者は既に動き始めているため，看護師への通知が遅いという問題がある．センサ内蔵式ベッドは看護対象者の姿勢や動きを検知することができる．このため，離床動作を検知し，離床する前に通知することができる．しかし，センサを内蔵したベッドごと購入する必要があり，経済面で負担が大きく中小規模の看護施設では導入が難しい．本研究では，医療·介護施設の要求仕様を満たすシステムの構築を行った．ベッドに加わる荷重の変化からベッド上での姿勢を検知，睡眠深度と寝返り等の体動との強い関係から起床を予測して看護師へ通知するシステムの開発を行っている．なお，本システムは自治医科大学看護学部と共同で開発を行っている．本稿では，ひずみゲージを用いて開発した体動検知パネル(特許5006018)の詳細と，このパネルを用いた，ベッド上での看護対象者の姿勢検知手法の提案および，提案手法の実証実験とその結果について述べる．