小径ボールエンドミルを用いた超弾塑性型チタニウム合金のミーリング加工に関する研究－加工変質層を考慮した切削条件の選定

摘要

近年，優れた生体適合性を有するチタニウム合金が外科用及び歯科用インプラント材料として広く用いられている．しかし，このようなチタニウム合金は人骨に比べて高い縦弾性係数を有するため，インプラントとして長期間埋大した際，応力遮蔽効果によって骨吸収が生じる．このため，低い縦弾性係数と従来材料と同程度の引張強度を兼ね備えた超弾塑性型チタニウム合金の適用が期待されている．この特性は減面率90%以上の冷問強加工を施すことで得られるため，素材形状は小さなものに限定され，製品の成形には小径工具による仕上げ加工が必須となる．また，この合金は高い溶着性を有するため工具寿命が短くなる．先行研究においては，AlCrSiN被膜工具が工具寿命の延長に有効であり，耐摩耗性と表面粗さの観点から切削速度2.5m／sが適していることを明らかとした．一方，本合金最大の特徴である低弾性率は，温度環境が高温となる場合や大きな外力が加わる場合に失われることが報告されている．そのため，材料品位を確保するには切削加工が被削材組織に与える影響の検証が必要となる．本研究では，小径工具を用いた超弾塑性型チタニウム合金のミーリング加工を行い，切削温度や切削抵抗の観点から加工変質層低減を考慮した切削条件の選定について検討する．