実環境のレーザ計測点群内における人間行動シミュレーションとそのアクセシビリティ評価への応用(第6報)－MoCap データに基づくデジタルヒューマンモデル歩行シミュレーションの高精度化

摘要

近年，環境内の人間の挙動を予測する人間行動シミュレーション技術が実用化され，災害時の避難方法の検討等に応用されている．一方で，高齢化社会の進行と共に，災害時の避難容易性だけではなく，高齢者を含む誰もが屋内外環境を快適かつ安全に利用できるかといった環境アクセシビリティ[2]の担保も重要となってきている．そこで本研究では，実環境を計測して得られた高密度な3 次元レーザ計測点群から，人間行動シミュレーションのための環境モデルを高精度かつ低コストに自動構築する技術を実現し，さらに，環境モデル上でのデジタルヒューマンモデル(DHM)を用いた人間行動シミュレーションに基づき，実環境のアクセシビリティを定量的に総合評価する手法を開発する．図1 に示すように，これまで著者らは屋内環境の3 次元計測点群からの実環境モデルの自動構築機能，および得られた実環境モデル上でのDHMの歩行シミュレーション機能[3]を開発してきた．しかし，このDHM は運動学のみに基づいて歩行動作を生成しており，必ずしも実際の人間の歩行動作を正確に模擬しておらず，例えば環境の安全性評価のために用いられるつまづきリスク[4]推定のためのつま先クリアランスを正確に取得できないといった問題があった．そこで本報では，前報のDHM を多自由度化し，さらに，実際の人間の平地歩行を計測したMoCap データを含む歩行データベース[5]を歩行シミュレーションに活用することで，点群ベースの環境モデル上で，より自然な歩行動作を生成できるアルゴリズムを開発した．