神経活動の伝導計測による髄鞘形成評価システム

摘要

神経細胞の軸索を取り巻く髄鞘は活動電位の伝導速度を上昇させる働きを持っており, 髄鞘の脱落は認知機能や運動機能に障害をもたらすことが知られている．また近年, 伝導速度が神経回路を制御するという観点から, 培養神経細胞を用いた基礎研究の分野では, 軸索を伝う活動電位の伝導を評価した研究が数多く行われている．しかし有髄神経における伝導を計測することは技術的に難しく, 髄鞘の形成による伝導速度への影響に関しては細胞レベルでの評価が行われていない．そこで本研究は, 髄鞘の形成による伝導速度の上昇を評価する培養デバイスを構築することを目的とした．培養デバイスは, 伝導の計測に加えて, 髄鞘を形成する細胞であるOligodendrocyte (OL)が軸索に作用できる構造とするために, 底面に電極を配置した培養皿であるMicroelectrode array (MEA)上に微小構造物を設置することで作製した．さらに作製したデバイス上で細胞の培養を行い, 免疫組織化学染色法および電気活動計測法によりデバイスの評価を行った．