サービス工学に基づくサービスCAD システムの構築(第91報)-サービスブループリントに基づくサービスシミュレーション手法

摘要

近年，社会の成熟により経済の中心はモノからサービスへとシフトし，多くの産業分野においてサービスの知識がより一層重視される傾向にある．このような背景のもと，サービスが生み出す付加価値に着目し，サービスの設計·製造のための工学的な方法論の提供を目的とする「サービス工学」[1] が提唱されている．サービス工学では，計算機を用いたサービス設計の支援システムとして，サービスCAD システム[1] などが開発されている．また，サービス工学では，サービスの提供に関わる活動を表現する手法として，サービスブループリント(以下，ブループリント)と呼ばれるフローチャート記法を採用している．ブループリントは，サービス提供プロセスを可視化することにより，サービス設計支援を可能としている一方で，プロセスの動作を確認することや，例えばサービスの受給·説明に関する顧客の理解力や，従業員の能力といったサービス特有の不確定要素を考慮しつつサービスの評価を行うことが困難である．これに対し，既存研究において離散·連続混合システムのモデリング·シミュレーション手法である場面遷移ネット(Scene Transition Nets, STN)[3]を用いて，サービス提供プロセスのシミュレーション及び評価を行う手法[4]が提案されているが，サービス提供プロセスの記述方法や指針が明確化されていないという問題点がある．しかし，ブループリントと場面遷移ネットの対応関係を明確化することにより，設計したサービスのプロセスモデルを直接利用し，サービスのシミュレーションや評価が可能とすることが期待できる．本稿では，ブループリントと場面遷移ネットの各構成要素の対応関係を整理し，サービス工学の手法に基づいて構築したブループリントを基にシミュレーション·評価を行う方法を提案する．