3次元心室モデルによる心臓不整脈のシミュレーション研究について

摘要

本稿では心臓不整脈の維持メカニズムに着目した3次元心室モデルによる大規模シミュレーション研究について紹介する．心室細動の成立には，何らかのきっかけにより不整脈が発生すること（トリガー）と，それが維持することが必要である．トリガーには，期外収縮·異常自動能等があり，主に細胞レベルでの電気活動の解析とシミュレーション実験とが行われている．一方，維持メカニズムを明らかにする上では，スパイラルリエントリーの挙動を経時的に観察する必要があり，組織·臓器レベルで長時間の計算を伴う大規模シミュレーション実験が必須である．またそのようなシミュレーション実験の解析には，個々の心筋ユニットの電気活動ではなく，多数のユニットの電気活動の総体としての興奮伝播ダイナミクスを捉えて可視化し理解する必要がある．さらにシステム生理学の観点からは，不整脈現象を再現するだけでなく，定量化したうえで数理モデルのどの要素が不整脈現象の変化に関わるのかを明らかにすることが，不整脈の直観的な理解につながる．本稿ではスパイラルリエントリーの安定性を解析し可視化する手法について紹介する．