(F)グロビュール移行制御による炭酸ガスアーク溶接技術の開発

摘要

炭酸ガスアーク溶接法は溶接能率が高く，アルゴン等の高価な不活性ガスを使用しない低コスト溶接法として我が国の主要な溶接法となっているが，スパッタおよびヒューム発生量が多いという欠点がある。これまで炭酸ガスアーク溶接の低スパッタ化を目指して多くの研究開発がなされた結果，低電流·短絡移行領域についてはマグ（Ar-CO_2混合ガス）溶接と同等レベルの低スパッタ化が実現されつつある～.しかし，炭酸ガスアーク溶接法では，溶接電流の増加に伴い，大粒の溶滴が不規則に移行するグロビュール（Globular）移行形態となり，スパッタおよびヒューム発生量が著しく増加する。その溶滴は複雑かつ極めて不安定な挙動を呈するため，溶滴移行制御は困難とされ，炭酸ガスアーク溶接法が開発されて以来50年が経過した現在でも高電流·グロビュール移行領域での低スパッタ·低ヒューム化は実現されていない。そこで本稿では，パルス電流波形を用いた新たなグロピエール移行制御に取組み，規則的な溶滴形成と溶滴離脱を実現することによるスパッタおよびヒューム低減効果を明らかにする。更に，この開発法の特長とこれを鉄骨ロボットシステムに適用した際の溶接性能の一例を紹介する。