マルテンサイト系ステンレス鋼の応力腐食割れおよび腐食疲労き裂進展特性の評価

摘要

マルテンサイト系ステンレス鋼は高強度·高耐食性といった特徴から原子力発電所や一般産業機器で用いられているが，高塩化物·高温高圧環境等の苛酷な使用環境下で応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking, SCC)や腐食疲労(Corrosion Fatigue, CF)が問題となっている．応力腐食割れは静的引張応力下で，腐食疲労は応力腐食割れと繰返し応力の相互作用下で生じる現象である．高強度鋼は，応力腐食割れの一種である水素ぜい化割れを起こしやすいことが知られており，繰返し応力との相互作用によって疲労寿命が著しく低下することが報告されている．しかし，水素ぜい化割れと繰返し応力の相互作用に関する破壊力学的な研究はあまりなされていない．そこで本研究では，応力拡大係数K を制御できる試験機を用いて，水素チャージを施したマルテンサイト系ステンレス鋼のSCC および腐食疲労き裂進展特性を評価した．また，アコースティック·エミッション法(AE 法)と破面観察より，破壊機構を検討した．