炭素を含むMnFeCdNiCu系ハイエントロピー合金の凝固組織と低温引張特性

摘要

ハイエントロピー合金は従来の金属材料とは異なる物性を示す場合があることから，従来にない高機構の金属材料として期待されている。例えばCrMnFeCoNi合金は低温度で高強度·高延性を示す1）ことから，宇宙空間，極地海域などの極寒冷環境用の構造部材として期待される。しかし，この合金は酸化しやすいMnやCrを含むことから溶解時に酸化物が懸濁し，鋳造欠陥が生じることが懸念される．そこで，この合金に炭素を添加することを試みた．炭素を含むことで溶解時の溶湯雰囲気を還元性にし，黒鉛を晶出させることで凝固収縮が減少することが期待される．しかし）この合金中に炭素を添加するとクロム炭化物を形成することが報告されている．そこで，CrをCuに置き換えたMnFeCoNiCu系ハイエントロピー合金に炭素を添加することで黒鉛を晶出させることを目的として，凝固組織に及ぼす炭素添加の影響を調査した。また，得られた鋳物の低温引張試験を行った。