(PS174)準安定系ハイエントロピー合金における引張特性の変形温度依存性

摘要

多種類の元素を当原子量またはほぼ当原子量含む合金を「ハイエントロピー合金」と呼ぶ．オーステナイト安定度が高いCrMnFeCoNi 系ハイエントロピー合金（以降，安定系HEA，HEA: high-entropy alloy と呼称）は，温度が低下するのに伴い強度·延性が共に増加するという非凡な引張特性を有する[1]．一方，安定系HEAより安価である，Ni を除いた準安定的なCrMnFeCo 系ハイエントロピー合金（以降，準安定系HEA と呼称）は，室温環境下で熱誘起HCP(ε)マルテンサイトを有しており，γ 相とε 相の二相構造となり強化される[2]．さらに，TRIP(Transformation Induced Plasticity)効果，すなわち変形中の加工誘起マルテンサイト変態による変態誘起塑性により加工硬化能が向上し，室温環境下では準安定系HEA は安定系HEA と比べ高強度·高延性を示す[2]．ここで，準安定系HEA は温度により組織内のマルテンサイト分率が変化し，引張特性に大きな影響があることが考えられるが，その詳細は明らかになっておらず，低温環境下で安定系より優れた特性を示す可能性がある．そこで本研究では，準安定系·安定系HEA における引張特性の変形温度依存性を調査し，両者の比較を行った．