内部冷却リブと孔後方突起を有する平板膜冷却のロバスト最適化

摘要

近年ガスタービンの高温化が進み，タービン翼の冷却技術の重要性が増している。タービン入口温度が1100°Cを超えるタービン翼では，従来の内部冷却のみでは熱応力が過大になることから，冷却空気の一部を翼外に吹出し，翼面に冷却空気の膜を形成して熱負荷を低減する，いわゆる膜冷却が採用されており，高温ガスタービンの冷却翼を成立させる最も重要な技術となっている。ガスタービンの更なる高効率化のためには，高性能な膜冷却手法の開発が重要である。著者らはこれまでに，タービン初段動翼の冷却構造を模擬した平板膜冷却を対象に実験を行い，内部冷却流路におけるリブ配置が膜冷却孔内の流れ構造に大きく影響し，リブの向きの適正化により低吹出し比条件下での膜冷却効率を向上できることを示している。また，新しい冷却構造として孔後方の突起を着想し，突起により膜冷却効率が大きく向上することを示している。しかしながら，実際のタービン翼の製作やガスタービンの運転の際には，突起形状や吹出し比の厳密な制御は困難であり，製造時のばらつき·運転条件の変化·経年劣化等により，設計段階と運転中の形状および条件が結果的に異なってしまうことで，想定よりも冷却性能が低下して，欠陥が発生する可能性がある。そこで，製造上および運用上の誤差も考慮した上での最適条件，すなわちロバスト最適条件を求めることが必要である。本報ではロバスト最適化手法であるタグチメソッドを用いて，製造誤差および運転条件の変動に対して安定で，高い膜冷却効率を実現できる設計条件の選定を試みた。