免疫機構における濃度勾配による好中球の水中運動について

摘要

好中球は生体内の免疫機構の一つであり，走化性を持つことで知られる．この走化性は，生体内の炎症患部から産生されるサイトカインと呼ばれる走化性因子によって与えられ，好中球は患部に向かって進行する．しかしながら，走化性因子による好中球の駆動機構は解明されていない．これまでの研究では，好中球を微粒子の一つとし，濃度マランゴニ効果によって駆動力を得られると仮定して好中球膜上とその周囲流体のサイトカイン濃度の変化を実験的に調べてきた．その結果，好中球と周囲流体はそれぞれ逆の濃度勾配を持っており，この現象が駆動に影響していると実験的には推察された．しかし，膜上の濃度分布やその時間変化の詳細は十分にわかっていない．そこで本研究では、好中球の駆動や膜上の濃度勾配を観察し，膜上の濃度状態および濃度勾配が駆動に与える影響について調べた．