ナノ·マイクロバブルと超音波を用いたリンパネットワークによるリンパ節内への高分子導入に関する研究

摘要

先進国における死因の上位はがhである．がhによる死因の9割は転移が原因となっており，転移の早期診断と治療が重要である．乳がhや頭頸部がhにおける所属リンパ節転移の場合，郭清術は患者の全身状態が手術に耐えられ，転移病巣が重要臓器に浸潤していない場合に限定される．郭清域は転移リンパ節の分布で定まるが，郭清域外にあるリンパ節に対する転移リンパ節の根治療法は確立していない．現在，リンパ節転移を有するがh種に対して，血行性による抗がh剤の全身投与がおこなわれているが，一般的に低分子である抗がh剤は組織選択性に乏しいため，標的リンパ節へのアクセスは困難であり，抗がh剤の全身投与における転移リンパ節への薬剤送達効率は低いと考えられている．これらの問題を解決するために，我々はリンパ行性薬剤送達法を提案してきた．これは，郭清実施前に郭清域内のリンパ節に薬剤を注入し，リンパ管経由で郭清域外である下流リンパ節に薬剤を送達させることで，郭清域外のリンパ節における微小転移の予防や治療をおこなうものである．しかし，抗腫瘍効果を持つ薬剤はその種類によって異なる分子量をもち，分子量の違いが細胞への取り込みに影響することが知られている．