ビル一体型太陽光·燃料電池ダブル発電システムのエネルギー需給特性

摘要

地球温暖化や化石燃料枯渇といった地球環境問題の解決方法の一つとして，再生可能エネルギーの普及が挙げられる．しかし再生可能エネルギーはエネルギー密度が低く，エネルギー需要を満たす戦略的な取り組みが必要である．そのような中，ビルのエネルギー需要を満たすように再生可能エネルギーと組み合わせたゼロエネルギービル（ZEB）やスマートビルが注目を集めつつある．ビルの屋上や側面にソーラーパネルを設置して発電し，発電特性やエネルギーペイバックタイムなどについて評価した報告もある．太陽光を利用する場合，その時間変動性からエネルギー貯蔵について考える必要があるが，大規模に1日以上の貯蔵を考える際には水素に変換する方が蓄電池やフライホイールで貯蔵するよりも優位性がある．しかしながら，ビルに設置した太陽光発電の貯蔵方法として水電解による水素変換を検討した事例はなく，さらにはその水素を燃料電池で発電して太陽光発電で賄えない時間帯の電力需要に対応する運転方法を検討した事例もない．そこで本研究では，ソーラーパネル，水電解装置，燃料電池を組み合わせてビルの電力需要に対応するスマートビルを提案し，三重県内5都市（津，四日市，桑名，伊勢，尾鷲）の気象データ（電力10社が参画している経済産業省の補助事業「分散型エネルギー大量導入促進系統安定対策事業」で取得した2013年8月から2014年7月までのデータ（PV300））に基づいて太陽光発電特性を調べ，文献よりビルモデルに適用した一般家庭の電力需要特性と比較し，太陽光発電だけでどの程度電力需要を賄えるか評価した．また，日中の余剰な太陽光発電電力量を水電解し，夜間に燃料電池で発電するシステムについて検討を行い，太陽光発電で対応できない時間帯の電力需要を燃料電池発電でどれぐらい賄えるか検証した．