ラマン分光分析のためのプラスチック歯車用小型曲げ疲労試験機の開発

摘要

本研究では，プラスチック歯車の歯元に対してラマン分光分析を行うために，小型の曲げ疲労試験機を試作し，予備実験によってその試験機の性能評価を行った．試験機の試作は，ラマン分光分析器に積載可能なサイズと質量であること，歯車耐久試験機と同様の境界条件や負荷条件を与えられること，等を考慮し，空気圧アクチュエータ·マイコンを利用した．また試作した試験機を用いてPOM歯車の静的負荷試験を行い，歯車歯元のラマンシフト量を測定した．その結果，静的負荷試験では，負荷を増加させることによりラマンシフト量が変化し，今後，負荷とラマンシフト量の定量的な評価が可能であることが確認できた．また同じ試験機を用いて繰り返し負荷試験と試験前後における歯車歯元のラマン分光分析を行った．耐久試験でのかみ合い回数の5倍以上の繰り返し負荷を与えても歯車は損傷しなかった．ただし，繰り返し負荷試験時間の増加とともに，ラマンシフト量が増加する傾向が定性的に確認できたことから，今後，負荷や温度の状態をモニタリングすることができれば疲労に対する蓄積するひずみ等の状態量を定量的に評価できるといえる．今後の課題としては，歯元のラマン分光分析を行う位置の設定方法を確立することである．