筋活動を考慮可能な人体有限要素モデルの開発と衝突時の頭頚部挙動の検証

摘要

平成24年度の国内の交通事故統計によると，死亡者の受傷部位では頭部が最も多く，自動車乗員では約40%，歩行者では約60%も占めており，さらなる頭部傷害の低減が望まれている．頭部傷害の発生メカニズムを解明するためには，頭部挙動を把握することが重要であり，頭部挙動は頚部挙動の影響を受けるため，頚部挙動を精度良く予測することが必要となってくる．一方，交通事故の詳細な調査結果によると，衝突直前において回避行動（ブレーキ操作やハンドル操作）を行った自動車乗員は衝突事故の場合に全体の約60%を占める．回避行動の際に筋は活性化し，その結果，姿勢の変化や筋の硬さすなわち筋硬度に変化が起こる．それ故，より高い精度で傷害を評価するためには，筋活動を考慮することが重要である．本研究では，筋活動が考慮可能な人体有限要素(Finite Element: FE)モデルを開発し，衝突時の頭頚部挙動に関して献体実験データや被験者実験データと比較することによりモデルの生体忠実度を調査した．