異なる創製条件下のエレクトロマイグレーションによる金属ナノストラクチャー創製の数値シミュレーション

摘要

近年，ナノテクノロジーの重要性から，ナノチューブやナノロッド，ナノワイヤなどのナノストラクチャー（以下NSと略す）が注目を集めている。最近，高密度電子流による金属原子拡散であるエレクトロマイグレーション（以下EMと略す）を利用した金属NSの創製方法が提案され，Al薄膜試験片を用いてNSを創製することに成功している。また，本創製方法の理論的考察に基づいて効率的なNS創製条件を検討するために，本創製方法の数値シミュレーション手法開発の試みがなされている。本手法は，理論的に導出されたEM損傷支配パラメータを用いることにより試験片内の原子濃度分布の形成過程をシミュレートすることに基づいている。しかしながら，実際のNS創製は試験片においてEM損傷による断線が生じるまで継続するのに対し，同数値シミュレーションは断線に至るまでの創製を扱っていない。そこで本研究では試験片が断線に至るまでのNS創製の数値シミュレーション手法を開発するとともにいくつかの創製条件に適用し，実験結果と比較することによりシミュレーションの有効性を示す。