薄液膜下における鉄-亜鉛対のカソード防食距離の数値解析

摘要

亜鉛および亜鉛系合金めっきを施した鋼板の切断面では、犠牲防食作用により，下地鉄部の腐食が抑制される。この腐食が抑制される距離は，カソード防食距離又は犠牲防食距離と呼ばれ，鋼材寿命を決定する因子として重要である。しかしながら，犠牲防食距離は，電解質である水溶液の膜厚や導電率，アノードとカソードの幅等様々な因子により大きく変化するため，定量的に把握することが困難である。また，100μm以下の液膜厚下における測定は困難であり，薄膜厚下における犠牲防食距離を知るためには数値解析による検討が有効である。しかし，薄液膜下における数値解析結果は，液膜厚が薄くなるほどアノード電流密度が低下するという実験結果と反対の結果となることが指摘されている。これは，バルク水溶液中における分極特性を用いて計算したことが原因であり，薄液膜下ではカソード電流の液膜厚依存性が顕著になるため，カソード電流特性に液膜厚みの影響を考慮する必要がある。本研究では，液膜厚みの影響を考慮したガルパニック腐食の数値解析モデルを開発し、鉄-亜鉛系における犠牲防食距離のNaCl濃度と液膜厚の依存性を検討した。