原子力発電プラントにおける応力腐食割れ寿命予測技術の現状と課題

摘要

応力腐食割れはき裂の進展という形態を取る局部腐食であるから，その生起／進展は装置，機器，設備に致命的な損害を与える可能性がある．従って，工学的には寿命予測技術が重要である．近年，海外の経年原子力発電プラントにおいて，加圧水型原子炉(PWR)の圧力容器上蓋管台等におけるNi基ステンレス合金の応力腐食割れ損傷事例が報告され，また海外の経年沸騰水型原子炉(BWR)の再循環ノズル溶接部におけるNi基ステンレス合金の応力腐食割れ，あるいは海外および我が国のBWR炉内構造物（炉心シュラウド）あるいはPLR配管系における極低炭素ステンレス鋼の応力腐食割れが経験されている．これらの損傷経験と，我が国においても運転年数が30年に達する原子力発電プラントが出現している現状から，応力腐食割れ寿命予測技術への関心と確立，高度化へのニーズが，改めて高まっている．とくに炉内構造物などの，圧カバウンダリーを構成しない機器については，発見された応力腐食き裂の進展予測に大きな関心があり，とくにNi基ステンレス合金については実験室データが不足していることから，国のプロジェクト研究としてデータ蓄積が進hでいる．一方，圧力バウンダリーを構成する機器については，応力腐食き裂発生寿命の定量化への関心が高い．