高温·高面圧条件におけるモデルエンジン油の油膜厚さ·潤滑特性のナノレベル評価

摘要

潤滑油による摩擦低減技術は、自動車産業などの産業分野において、効率化や省エネルギー化をもたらすため非常に重要である。潤滑油が使用される環境において、例えば機械の低速運転時や高荷重条件下といった、潤滑油の油膜が非常に薄い境界潤滑状態では、固体の直接接触が起こり始めると考えられている。このような直接接触を避けるために、表面に吸着して保護膜として機能する添加剤を、基油に配合している。より適切な潤滑油の設計には、配合された添加剤が、潤滑している表面間で、どのような状態で、どのような特性を示し、潤滑においてどのような機能を担っているのかを分子レベルで明らかにすることが重要である。前回の発表までに、我々は、異なる添加剤成分を含む7種類の自動車エンジン油のモデルを対象とし、添加剤成分により荷重に対する油膜厚みや潤滑特性がどのように変化するのかを、独自開発した手法である共振ずり測定法(Resonance Shear Measurement, RSM)を用いて評価し、粘度指数向上剤による潤滑性の向上、金属系清浄剤の粒子が油膜厚さ保持に有効であることなどを報告してきた。本発表では、異なる添加剤成分を含む4種類の自動車エンジン用のモデルエンジン油、および市販のエンジン油(0W-20)を対象とし、エンジン内の温度を想定した高温、高面圧条件での油膜厚みや潤滑特性が添加剤成分とどう相関するのか、RSMを用いて評価した結果を報告する。