硬さの異なる炭素鋼間のしゅう動における凝着物の移着方向に関する検討

摘要

凝着摩耗を制御するためにはそのメカニズムを詳細に理解する必要がある．筆者らは，摩擦力などの情報をしゅう動位置と繰り返し摩擦回数を２つの軸とした時空マップに表示する手法を開発し，凝着摩耗の要素メカニズムの解明に努めてきた。その結果，同種材同士のしゅう動においても，摩耗粉の元となるマイクロメートルレベルの凝着物の成長と移着が2 物体間で対等に行われていないことが明らかになった．このことは，①相対的に機械的強度が弱い物体から他方に一方的に凝着物が集められること，そして②常時しゅう動と間欠しゅう動など試験片間のしゅう動条件の相違が影響すること，が原因であると考えられた．本稿では①の仮説を検証するため，同一鋼種の炭素鋼に異なる熱処理を施すことにより異なる硬さを付与した試験片を組み合わせてしゅう動試験を行い，考察を加えた．