粘度指数向上剤とそのトライボロジー特性

摘要

粘度指数向上剤（VII）は，潤滑油の粘度温度特性の改善に用いられる高分子化合物である．潤滑油への添加は古く，1930 年代からポリアルキルメタアクリレート（PAMA）やポリイソブチレン（PIB）が使用されている．その後，戦争による技術革新等により性能が向上し，エチレンとプロピレンの共重合体（OCP）なども開発されてきた．さらに，1950 年代に入ると SAE 粘度分類に W グレードが設定され，マルチグレード化が進む事により使用量も伸びてきたさらに 1990 年代に入り，日米の自動車メーカーが協力して ILSAC（International Lubricant Specification Advisory Committee）を設立し，ガソリンエンジン油の環境配慮を主眼とした ILSAC 規格を制定した．規格の項目に Fuel Economy 試験があり，規格の厳格化によりマルチグレード化に拍車がかかるとともに，従来よりも高性能な粘度指数向上剤が開発されてきている．最近では，粘度温度特性の向上に加え油膜形成や摩擦特性などの性能も付与された VII が開発され，様々な評価が行われている．本報告では，粘度指数向上剤の種類と効果の発生メカニズムおよび最近のトライボロジー特性について報告する．