X 線管球用軸受は,高温·高速·高真空中という過酷な環境で使用されるとともに,X 線放出のための導電性と,患者の負担軽減のための静粛性·低騒音性も求められる.これらの要求に対して,鉛被膜がお体潤滑剤として用いられている.しかし,鉛は環境負荷物質であるため使用量の削減が求められており,代替技術が必要となっている.上述のような環境で適用可能な鉛以外のお体潤滑剤としては,銀が挙げられる.銀は耐熱性や導電性を兼ね備え,真空中においても優れたすべり特性を示すが,鉛と比べると軸受トルクが大きくなる傾向にあり, 鋼に対して少なからず移着を生じることが報告されているの.このことは,軸受寿命に対しては大きな問題にならないと推測されるが,表面に凹凸が形成されることで振動上昇が生じ,音響特性が悪化することが懸念される.そこで本報では,固体潤滑材である銀の相手材質を変えて軸受試験を行い,銀被膜の移着性の違いとそれが軸受振動に及ぼす影響を調査した.
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