計算化学手法を用いたPTFE樹脂／金属界面のトライボケミカル反応解析

摘要

ポリ四フッ化エチレン(PTFE)をベースとする摺動材は自己潤滑性を有することから，例えば真空機器など潤滑油やグリースが介在しない金属摺動部で幅広く用いられる。PTFEによる潤滑作用の源泉は，相手金属面への移着膜形成にある。厚さ数nmの移着膜が相手金属面を覆うことで，摺動材に対し硬質な金属面が直接接触せず，移着膜と摺動材との界面にすべりが生じ低摩擦化する。一方，PTFEのトライボ特性は使用環境に強く依存し，例えば不活性ガス中などでは摩耗増大するが，PTFEの環境に依存した移着膜形成メカニズムやトライボ特性へ及ぼす影響は不明である。本研究では，移着膜の厚さに等しいナノオーダでの現象解明が可能な計算化学手法を活用して，PTFEと金属との界面で起こる化学反応を解析し，トライボ特性との関連を検討した。