転がり軸受用グリースの潤滑寿命推定技術

摘要

転がり軸受のグリース潤滑法は，グリースの給脂を前提とした手法と，給脂を行わず初期に封入したグリースのみで使用する手法の2 種類に大別できる．転がり軸受は，潤滑状態が良好であれば，軸受材料が転がり疲れ現象により転走面に亀裂（クラック）が生じたり，剥離（フレーキング）が生じることにより寿命を迎える．グリース潤滑のメリットとして装置が簡略化できる点が挙げられ，特にグリース密封転がり軸受とすることによりメンテナンスフリーを達成できる．グリース潤滑ではグリースの劣化などにより良好な潤滑状態が維持できない場合，転がり疲れ現象により軸受寿命となる前に潤滑不良による寿命を迎えやすい．特に，グリース密封軸受では軸受寿命が潤滑寿命，すなわちグリース寿命で決定されるようになる．このため，機械装置の設計において転がり軸受の耐久限界の推定等を行うために，グリース寿命を予測することが重要となる．このニーズに答えるため，グリース寿命試験に基づく各種のグリース寿命式が提案されている．本報では主にグリース密封軸受に着目し，転がり軸受におけるグリース寿命試験や寿命に影響する要因，およびグリース寿命式について報告する