窒素ガス環境における水素含有窒化炭素膜の低摩擦発現に及ぼす含有水素の影響

摘要

ダイヤモンドライクカーボン（DLC）膜と総称される炭素系硬質薄膜は真空中及び窒素ガス環境にて超低摩擦を示すことが報告されている．特にアモルファス窒化炭素（CN_x）膜は，窒化ケイ素（Si_3N_4）を相手材に，窒素ガス環境下で 0.01 以下の低摩擦係数を示すことが報告されており，この際の摩擦面には雰囲気に含まれる水分子由来の水素の吸着が確認されていることから，摩擦面における水素終端が大気中低摩擦発現のための必要条件のひとつと考えられている．さらに，DLC 膜由来のグラファイト状の移着膜の形成が促進されていることから，含有水素量の増加に伴い摩擦が減少することが報告されている．この知見に基づき，CN_x 膜に水素を含有させた水素含有 CN_x（CN_x:H）膜を用いることで大気中においても低摩擦が発現する可能性が示されており，含有水素量の制御が幅広い環境における低摩擦発現の鍵を握るものと認識される．そこで本研究では，従来低摩擦発現が確認されている窒素ガス吹付け下での CN_x:H 膜の摩擦特性に着目し，安定した低摩擦発現を可能にする CN_x:H 膜の必要条件を明らかにする．