点接触EHL の転がり抵抗に及ぼす油量不足の影響

摘要

EHL 転がり抵抗は転がり軸受のトルクの主成分の一つであり，その予測は回転機械の省エネルギー設計において重要である．十分潤滑状態の転がり抵抗については，数値解析結果に基づく計算式が提案されている．一方，多くの転がり軸受は油量不足状態で運転されており，油量不足の影響を考慮した計算式が必要とされている．従来の解析では，油量不足は解析領域の入口側の境界を接触部に近づけることで模擬され，油量不足による転がり抵抗の減少率は入口距離をパラメータとして求められていた．しかし，実際の軸受では入口距離は不明であるため，このような解析の有用性は限定される．また，線接触の転がり抵抗の減少率の計算式は提案されているが，点接触の転がり抵抗については同様の式は見当たらない．入口距離は接触部周囲の再流動（reflow）に大きく影響され，油量のみならず転がり速度や油の粘度·表面張力に依存する．本報では再流動を考慮した油量不足状態の点接触EHL 解析を行い，転がり抵抗の解析結果を示すとともに，実験的検証を行う．また，Hamrock-Dowson の膜厚計算式に基づいて，転がり抵抗計算式を提案する．