超精密切削加工によって形状付与した鋼表面におけるGPSパラメーターと境界潤滑特性との関係について

摘要

境界潤滑特性に対する表面性状の影響因子は多岐に渡るため，その体系化が課題である．表面の幾何形状が摺動特性に及ぼす影響因子を定量的に調査するために，表面性状パラメーターを用いて摺動特性を評価する試みが多くなされている．しかし，摺動特性を完全に評価することが可能な表面性状パラメーターは，未だ開発されていない．筆者らはその理由を，従来の表面性状パラメーターが，多様な形状要素から構成される複雑な表面性状を十分に表現していないからであると考えた．そこで，先行研究において，精密加工を用いて単純な形状要素から構成される表面を作製し，その摺動特性を調査した．その結果，従来の表面性状パラメーターと摺動終了直後の安定した摩擦係数に相関関係が示唆された．先行研究では，摺動初期に高かった摩擦係数が推移し，その後低い値で安定するなじみ過程の有無が，表面形状と摩擦係数の関係において重要であることが示された．そこで本報は，摺動による表面幾何形状およびそれに伴う摩擦係数の変化に着目し，ダイヤモンドバイトを用いた精密切削加工で溝を付加した試験片表面の，摺動特性と表面性状パラメーターの関係について調査した．