貧潤滑下におけるカーボンファイバーブラシの摩擦特性の特異性

摘要

炭素繊維はブラシ材料のひとつであり，高強度，高引張弾性率，化学的安定性などの優れた特性を有しているため，航空機からスポーツ用品まで様々な用途で用いられており，特に樹脂との複合材料であるCFRP として用いられることが多い．炭素繊維の束は，バルク材料と異なり細かく分かれた多数の繊維で構成されており，個々の繊維がそれぞれ柔軟に変形することが可能であることから，相手表面の凹凸形状に合わせた接触や，潤滑液を用いる場合繊維同士の隙間に潤滑液が保持されること等によって，バルク材料にはない特異な摩擦特性を有する表面の設計が可能となることが期待される．そこで本研究では，バルク材料にはみられない特異な摩擦特性を期待して炭素繊維をブラシ材料試験片として用い，炭素繊維自身の摩擦特性について検討を行う．これまでに炭素繊維自身の摩擦摩耗特性として，大気中摩擦において静止摩擦係数と動摩擦係数の差が微小であるためにスティックスリップを起こさない性質を有していることや，炭素繊維端部の接触では折損による摩耗が問題になる事に対して炭素繊維を束ねて円弧状に固定し繊維側面で接触させる場合摩耗量が大幅に減少すること等が報告されている．しかし，潤滑液を用いる条件における炭素繊維の摩擦摩耗特性については明らかになっていない．そこで本研究では潤滑液として水とPAO（Poly-α-olefin）油を使用し，炭素繊維の摩擦特性に及ぼす潤滑の影響について検討を行った．具体的には炭素繊維の摩擦特性に及ぼす潤滑液の有無およびその量の影響と摩擦速度の影響について検討を行った．