タンタル含有窒化炭素膜の摩擦特性に及ぼす雰囲気の影響

摘要

エネルギ，環境問題の観点から，潤滑油の使用量が制限される環境において低摩擦·高耐摩耗性を有する表面の開発が必要とされている．炭素系硬質薄膜は表面粗さが小さく，低摩擦，高耐摩耗性を有するため，固体潤滑剤として有望である．さらに，炭素系硬質薄膜は金属元素を含有させることにより，摩擦係数，耐摩耗性を向上させる可能性があり，タンタル（Ta）とカーボンから作製されたTa-C/a-C 膜の極表面にアモルファスカーボンのオーバーコート層を成膜することで，大気中において摩擦係数が0.05 以下になることが報告されている．一方，窒化炭素（Carbon Nitride: CN_x）膜は，摩擦係数が摩擦雰囲気に依存し，窒素雰囲気中で摩擦係数0.01 以下の超低摩擦を発現することが報告されている． そして，Ta をCN_x 膜と組み合わせたTa-CN_x 膜は大気中で超低摩擦を発現するが，その基本的摩擦特性は未知な要素が多い．そこで，本研究ではTa-CN_x 膜のSUJ2 球との摩擦における雰囲気及び膜組成の影響を明らかにするため，乾燥窒素，乾燥大気，アルゴン吹付け環境下において摩擦試験を行った．また，摩擦試験前後の摩擦面をAES（オージェ電子分光）分析し，含有元素の摩擦前後の変化を明らかにした．さらに，Ta-CN_x:O 膜（酸素含有Ta-CN_x 膜）の各種ガス吹き付け環境下における相手材表面の移着膜の形状をAFM(原子間力顕微鏡)を用いて明らかにした．