潤滑剤によるボルト締付け条件の最適化

摘要

各種機械の小型軽量化や精密化などにより，ボルト締結体の使用条件は年々過酷になっており，ボルトの破損やゆるみによる事故を防止するために，より正確な締付け力管理が求められている．ボルト締結体の締付け管理方法の中で，トルク法は簡便で最も広く用いられている方法である．しかしトルク法は，締付け力の正確な管理が難しく，目標値に対して大きくばらつくという問題がある．トルク法の締付け誤差の原因は，一般に締付け時のねじ面および座面の摩擦係数のばらつきと言われている．また，その摩擦係数はボルト·ナットの形状誤差や被締結物の材質，表面状態，使用する潤滑剤などによって大きく変化することが報告されている．このようなトルク法における摩擦係数のばらつきに関する研究は，これまで主に鉱油やグリースを使用して行なわれており，高分子潤滑剤に関する報告は少なく，締結速度や被締結物が締結中の摩擦係数に与える影響に関する知見が十分であるとは言えないそこで本研究では，トルク法の信頼性向上を目的として，締付け時の摩擦係数を安定化させるねじ締結用潤滑剤ポリイソブチレン（-［C（CH_3）_2CH_2］n-）に着目し，締結時の締結速度や被締結物の材質，表面状態などがボルト締結における摩擦特性に及ぼす影響を調べ，最適な締付け条件を提案する．