音楽聴取時における呼吸の引き込み現象の解析とメディアプレイヤーへの応用

摘要

本研究では，音楽を一方向的なメディア（CDなど）から聴くときと生演奏で聴くときとの相違を，音響設備等からの観点ではなく，音楽を介するコミュニケーションの相互作用の観点から解析し，一方向的なメディアによる音楽を生演奏のように再現できるシステムの構築を試みる．本研究で音楽を介するコミュニケーションを解析するにあたり，引き込み現象に注目する．その理由として引き込み現象の2つの様相，片方が他方に一方向的に合わせるという強制引き込みと，両者が互いに合わせあうという相互引き込みが，一方向的なメディアからの音楽と双方向的である生演奏による音楽の相違を解析する上で有効であると考えられるからである．これまでコミュニケーションを引き込み現象を用いて研究された例はあるが，それにおける一方向性，双方向性についてはとくには言及されていない．また本研究で音楽を介したコミュニケーションを，引き込み現象を用いて具体的に解析するにあたり，我々は予備実験より音楽の小節周期と聴取者の呼吸周期の間に引き込み現象を見出し，注目した．これまで音楽と人間の生理指標の関係をみた例としてなどがあるが，音楽の小節情報と呼吸の対比を詳細に見た例はなかった．