NaCl水溶液中におけるWC系超硬合金の腐食挙動に及ぼす塩化物イオン濃度と温度の影響

摘要

大型ポンプにおいて、軸受部をプロセス流体（河川水や海水など）で潤滑することにより、 潤滑に必要な清水を軸受に補給する注水システムや保護管が不要となり、構造を簡素化で きる。軸受部は軸受とスリーブから構成されており、スリーブに必要な材料特性として、 耐摩耗性とプロセス流体中の耐食性があげられる。特に耐摩耗性の観点からスリーブには 超硬合金を適用している。しかしながら、超硬合金の耐食性については不明なことが多い。 著者らはNaCl水溶液中のWC－Ni－Cr－Mo系超硬合金の腐食挙動について酸性ではバインダ 金属が溶解、中性かつ卑な電位では不動態状態、中性かつ貴な電位ではWCが溶解、アル カリ性ではWCとバインダ金属が溶解することを報告した。l）実際のスリーブは河川水や 海水といった中性塩化物環境で使用するため、中性環境中における種々の塩化物イオン濃 度、温度における超硬合金の腐食挙動を明らかにする必要がある。そこで本研究ではNaCl 水溶液環境中におけるWC系超硬合金の腐食挙動に及ぼす塩化物イオン濃度と温度の影響 を明らかにすることを目的とした。