固液分離装置内の流れ場の数値予測

摘要

現在，化学工業·鉱業·金属工業などにおいて，材料粒子のナノ化，微細金属の回収，工業排水の処理などを目的として，液中に含まれるナノレベルの粒子を分離·分級する装置が求められている．従来の固液分離装置には，遠心力を用いて分離を行う横型遠心分離器や加圧濾過を原理とするフィルタープレスなどがあるが，横型遠心分離器では1μm，フィルタープレスでは100μmオーダーの分離が限界とされ，さらに分離後の固形物含水率を低減することが困難であった．本研究で対象とする固液分離装置は，回転軸を地面と鉛直にとることで，遠心力と液体·固体の比重差を利用し，ナノレベルの分離·分級を行うことができる．また，非常に高い固形分回収率を達成し，分離後の固形物含水率も低減することができる．しかし，実験により装置内の現象を把握することは困難で，内部の流れ場，粒子の挙動及び分離プロセスは未解明であり，試行錯誤的な設計が行われている．このため，数値計算を用いて現象を解明し，使用条件に合った最適な形状·寸法を与えることで，更なる性能向上が期待されている．固液分離装置内部の流れは固気液三相流となるため，適切なモデル化が要求される．そこで，本研究では自由界面追跡法の一つであるVOF (Volume of Fluid)法とオイラー·ラグランジュ·カップリングに基づく計算法を構築し，数値的に固液分離装置内の流れを解明すること，加えて最適な形状を得るための設計ソフト開発の指針を得ることを目的としている．