諫早湾湾口部における2007 年夏季の潮流流速に関する現地観測

摘要

近年，諫早湾湾口部の北側海域では，夏季成層期に赤潮および貧酸素水塊が頻繁に発生し，二枚貝の養殖などに甚大な影響を及ぼしている．とくに,2007 年夏季にはアサリの大量死が報告され，大きな社会問題となった．松岡や石坂による赤潮の研究，多田らや平野らの貧酸素水塊に関する研究等は行われているものの，未だにこの海域での赤潮や貧酸素水塊の発生メカニズムは解明されていないのが現状である．このような背景のもと，著者らは，赤潮発生に関連する要因を把握する目的で，2007年6 月下旬～8 月上旬に渡りADCP と水温塩分計を用いて諫早湾湾口部で潮流流速，水温および塩分の連続観測を実施した．さらに，2007 年8 月初旬から約1.5ヶ月間，多項目水質計を用いて竹崎島周辺海域で塩分，水温，溶存酸素，濁度およびクロロフィルa（以後，Chl-aと略記する）等の隔日観測を行った．本報では，それらの観測データおよび筑後川等からの流入流量との関係を明らかにし，諫早湾湾口部における塩分およびChl-a の動態と潮流流速との関連性について考察する．