通風·換気に関するDetached-Eddy Simulationの適応可能性に関する検討

摘要

近年，数値気流解析（CFD）を用いて建築物における通風·換気性状を解析する事例が増えている．特に，今日のエネルギー消費量削減に関する意識の高まりから，自然風を利用して建築物内の換気を行うケースが増えており，そのような流れ場を予測·評価するためCFD解析を用いる事が増えている．しかしながら，建築物の開口近傍は剥離等の複雑な流れ場が形成される事が多く，一般的に多く使用されるk-εモデル等のレイノルズ平均モデル（RANS）を利用した気流解析では，複雑流れ場の予測精度に問題がある(2)．また片側開口換気の様に開口部近傍の乱流輸送現象が換気に支配的(20)な影響を及ぼす流れ場では，乱流現象を再現できる高精度の気流数値解法が求められる．そのような流れ場を予測する手法としてLarge-eddy simulation（LES）の使用が望ましいが，壁面境界を有する流れ場を精度よく計算するには壁面近傍の渦構造を解像できる微細な格子を設ける必要があり，計算コストの上昇を招く．通常，壁面近傍の格子数を減らすためにはモデル化した壁面境界条件が用いられるが，様々な流れ場において適用できる汎用的かつ高精度な壁面境界モデルは確立されていない．