細胞ネットワーク機能解析のためのマイクロ空間細胞配列チップの開発―細胞を模擬した微粒子の配列実験

摘要

ヒトゲノムプロジェクトの完了とともに，遺伝子の機能を調べるゲノム機能解析や遺伝子から発現するタンパク質を調べるプロテオーム解析などの研究が進められている．これは，テーラーメイド医療，遺伝子治療·再生医療を実現する高度先端医療や医薬品開発における細胞への薬効のスクリーニング技術といった健康·安心な理想社会を実現する医療·医薬の分野の発展に大きく寄与すると期待されている．しかしながら，生命の本質を解明するためには，こうした生体分子の機能解析のみならず，生体組織の構築·機能発現の最も基本的な単位である細胞の機能解明（セローム解析）が必須となる．そこで，本研究では，生体組織の基本単位である細胞が生み出すネットワーク機能を解明することを目的とし，細胞の位置や細胞間距離を空間的に制御して配置することを可能とするマイクロ空間細胞配列チップの開発を行う．また，細胞間相互作用やシグナル伝達の過程を阻害しないことも必要である．そこで，基板上に生体適合性材料であり厚膜ネガ型レジストであるSU-8 を用いて支柱をアレイ化して形成し，細胞を含む溶液を流すことで支柱により囲まれる空間に細胞を一つずつ規則正しく配列させることを可能とするデバイスの開発を行う．本稿では，細胞を規則正しく配列する際のケージとなるSU-8 製の支柱構造体をアレイ化してSi 基板上に作製するためのプロセスを最適化し，パッケージングしたデバイスへ細胞を模擬したポリマー微粒子を含む溶液（本稿では純水）を注入することで微粒子の配列実験を行った．さらに，微粒子配列の性能向上のため，疎水性を有すSU-8 へO_2プラズマアッシングによる親水化処理を行い，その効果の持続性を接触角にて評価した．