ダイヤモンドコーテッド工具を用いたポリベンゾイミダゾール材の高速ミーリング加工に関する研究－切れ刃の鋭利化と切削速度の高速化が仕上げ面のクラックに及ぼす影響

摘要

エンジニアリングプラスチック材料の一つであるポリベンゾイミダゾール（以後P.B.I.と記す）材料は，樹脂材料の中で最も耐熱性が高く，高温条件下における用途への適用が検討されている．前報1）では，複雑形状の部品を加工する際に多用されるエンドミルを用いた加工を対象とし，ダイヤモンドコーテッド工具を採用することにより，高能率で工具寿命が延長される加工が可能であることを明らかとした．しかし，このダイヤモンドコーテッド工具は成膜の際，切れ刃部分の成膜レートが速く，その結果としてエッジは鋭利さに欠ける結果となる（微視的にはエッジに丸みが付くため実すくい角は鈍角となる）．この工具をそのままの状態で使用した場合には表面に“むしれ”が生じ，加工面粗さを著しく低下させる原因となる．また，加工面にはマイクロクラックも生じ，機械的強度を低下させることも予測される2）．このため，P.B.I. 材料が本来ゆしている強度が効率良く引き出されていないと考えられる．本報では加工面の状況改善を目的として，フェースミーリング加工を対象に，微結晶ダイヤモンドコーテッド工具の刃先形状の違いと切削速度の違いが加工表面のクラック生成に及ぼす影響について検討する．